【80歳・旬のあい御影】 後編

 前号から続く最新情報「あい御影」CD「Amor Amor Amor」レコーディング風景。

 30年程前、私も参加した御影さんのアルバム(当時はLP)「Corazon Corazon」に収録された曲をあえて数曲ダブらせてみたが、やはり私の思ったとおり彼女は進化している。
数十年前「なんと感動させる歌い手だろう」と思っていた御影さんの歌が、さらに今回は胸に熱くなるものをなしに聴くことができなかった。
声は聴き比べると当然当時の方が若い。が、内容がこんなにも分厚く、奥深いものになるものなのかと、とどまることのない芸術性というもの。御影さんのさらに30年後を聴いてみたいと思ったのは、今回私だけではないだろう。
 同様に「見砂直照と東京キューバンボーイズ」の我らが、マエストロ「見砂直照氏」も「東京キューバンボーイズ」解散のラストコンサートで全国をまわった頃は70歳を超えておられたわけだが、曲をまとめ上げる感性は、若い頃録音されたレコードと聴き比べると、よりドラマチックであったと、当時を思い出す。
顔を真っ赤にして全身で指揮するマエストロ、全身どこにも力の入っていない今回の御影さん、どちらも対照的であるが、やはり両者に偉大さをダブらせるのは、積み重ねたキャリアそのものがちょっとやそっとのものではないことである。
「亀の甲より年の功」とはよく言ったもので、一朝一夕にできあがる類のものではないのが、この世界の極であろう。
 もともと長年君臨すること自体が資質に「亀の甲」があった上での「年の功」。若僧が逆立ちしたってかないっこないのはあたりまえ。偉大というチャンピオンベルトを手にしてしまった人達の目映い光を久々に体験した感のある今回レコーディング時の「あい御影」さんであった。
 今回のCD製作を私が手がけたということもあり、御影さんとの交流もより緊密になっている現在、10月に長野県の「駒ヶ根高原美術館ホール」で行った「あい御影」コンサートでの伴奏をしたときも、さらに新しい「あい御影」を随所に発見することができたことなど、また新たな感動のステージであった。
 キューバなどではごく当たり前になっている、70・80歳代のミュージシャンだが、他のジャンルと比べ体力も大きく影響するラテンという分野では日本人に向かないのかとさえ思われていたものに、光と新風を取り入れた功績は大きい。
 見砂直照マエストロも70歳代半ばに入って結成した、当時最先端のラテンバンド「ヌエボ・ラティーノス」(筆者・現在も一緒に演奏活動をしているエヘラも在籍)を作り上げるなど、強烈なパワーで我々を驚かせていたものだが、このジャンルに限っては、ある程度年齢を経ないと、確率しえないものがあるのかもしれない。
 確立し得た「あい御影」という偉大な素材を大切に残すため、私が企画する、2枚目の「あい御影」CDにむけて、大いに足が軽くなったことは言うまでもない。
 御影さんにつづく、流行りものでない本物のラテン音楽を継承する人に捧げたい。

2006.11