【自分が演奏して知らない曲?】

  楽器を持って「オハヨウゴザイマ〜ス」とスタジオ入りする。 
通い慣れたレコーディングスタジオでは、いつも自分が入るブースがほぼ決まっているので勝手に入る。
 楽器を自分の使いやすいように、これから仕事である演奏のためのセットをする。
 簡単なトレーニングを済ませ、すでに譜面台に用意されてある、これからレコーディングをするアレンジされた譜面と、自分の楽器の再チェックをする。(パーカッションは常に数種類の楽器を持ち替え演奏する)
 いつもの仲間達が別のブース内に見えると、そのブースのドアを開け「オハヨー」といって話をする。
 やがてミキサーがマイクを通じて「サウンドチェックお願いシマ〜ス」といってくる。自分のブースに戻る。
 モニターボックス(各楽器の音などのボリュームを分けられる)をみると●番ドンカマ、●番ドラム、●番ベース等々すでに書いてあり、ヘッドホーンを差し込み音量とバランスを演奏しやすいように調整する。
 やがて自分の番になると、これから使う楽器の音をマイクに向かって仮の演奏をする。
 そうこうしているうちにアレンジャーがやってきて指揮台のところに座り、自分のアレンジした曲のスコアを再確認する。
 今日演奏するミュージシャン全員のサウンドチェックが終わる。
 アレンジャーが自分のアレンジミスがないか、譜面を写した人が
間違って書いてないかの確認をかねて「いきま〜ス、ワン・ツー・スリー・フォー」とカウントをする。
 全員が初めての譜面を演奏する。
 間違いや直し等がないと「じゃ、回してください」(録音テープ
を)とミキサーに指示する。
 全員サウンドチェックより若干緊張する。演奏し終わる。
 たまに終わった瞬間に咳等、音を出すやつがいる。
 全員いやな顔をしながらもう一度録り直す。
 曲が終わって今度は5秒くらいコトリとも音を立てない。
 ミキサーがマイクで「聞きま〜ス」という。
 全員ブースを出て皆と歓談をしながら、さも〈俺はミスしてないもン〉というふりをしながら、自分の音が間違っていないか耳だけ今録った音に集中させる。
 ミキサーが「オーケーで〜ス」という。
 「お疲れさま〜」と全員がいう。
 自分のブースに戻って楽器を片づける。
 それぞれに帰り、片づけに一番手間取るドラムが最後になる。
 後は知らない。後にどこかでその曲を聴く。
 「どこかで聴いたことがあるな〜」と思う。
 著作隣接権で何々の曲いくらなどと、口座に振り込まれる。
 「あ〜あのヒットした曲、俺がやってたのか」と知る。
 初めてその曲好きになる。

2006.04