【粋】

 「粋」という言葉はもう殆ど死語になりつつある、落語の世界以外滅多に使われることのない言葉である。 が、この言葉ほど後世に残したい言葉はない。
 知っているだけでこの世の中から「悪人」などいなくなるといっても過言ではない素晴らしさをもっているこの言葉。
 ミュージシャンは、曲を作るときも、演奏するときも、どうすればこの「粋」な音楽を作れるかに終始する。
 演奏が、たとえ自分自身であまり気に入った出来映えではなくても、仲間などに「●●さんのはいつ聞いても粋だよね」等といわれればそれだけで「ま、いいか」と納得してしまうほど「粋」に憧れを抱いている。
 そもそもミュージシャンと落語家は、共通の観点で音楽や話に取り組んでおり、音の使い方や表現、或いは筋道、話し回しどちらも「粋」でなければ完成しない。
 落語家に「狂」の字が付くジャズファン。
 ミュージシャンに「狂」の字が付く落語好きが多いのを見ても、このあたりがよくわかる。
 名人が演じる「下ネタ」は嫌らしさがなく、クスクスと笑える。
 演奏にも下ネタに共通するものがあるが、これをさりげなく、さらっと演奏できるようになれば名人のレベルで下ネタも逆に「粋」を感じる。
 名人の演奏者は過去、現在大勢いるが、筆者が特にこのあたりの使い分けが粋で大好きなのは、心躍らせるジャズの名人「ルイ・アームストロング」通称「サッチモ」である。
 しゃべっているような重く沈んだ音、聞いただけで笑顔になってしまう豊かな表現力、底抜けに明るい音、いかなる時も常に「粋」なトランペット。
 このクラスになると、一日20時間練習したからといってなれるものでなく、内面から来る人間性、その他諸々な要素の集大成であるからして、とにかく何も疑問を抱かず只練習あるのみ、いつ開花するかわからないのである。
 「芸の道」は延々と続く、帰りのない、只々「粋?」だけの道である。

2005.11