【絶対音感】

 永年音楽に接しているとそれなりには「音感」もついてくるのだが、そのなかでも鋭い人、鈍い人、当然差がでてくる。
 音楽を演奏するとき「0」では困るが多少あれば、演奏するには困らない。 大事なのは自分が次に出したい音を予感するイメージがあるかどうかで、確実に寸分違えず「絶対音」を体の中に持っている人は場合によって邪魔になることさえある。 アマチュアの人達が、よく「自分は絶対音感がないので・・・」という話をしているのを耳にするが、ここでいっている程度の「音感」ならプロの人達は100%に近い数字で持っている。
 わかりやすくいえば、顕微鏡でしか見えない「ミクロの世界」を肉眼で見るような超世界の話である。
 何ヘルツ高い、或いは低い、という人間の耳では無理なところまでの「絶対音感」の話、私の永い音楽生活のなかで3人だけこういう人を(当然ミュージシャン)知っている。
 道を歩いているときに横断歩道を渡る時、「とうりゃんせ」がなる、このメロディーを聞いて「うわ!気持ち悪い」車のクラクションの音を聞いて「うわ!気持ち悪い」電子レンジのピーッという音を聞いて「うわ!気持ち悪い」このように微妙な狂いが気分悪く、時には吐き気までもよおすそうだ。
 道を歩いていて急にトイレに駆け込む事もしばしば。
 大幅にずれている音は逆に気にならないらしい。
 このように音に敏感になりすぎると、一緒に演奏している人がちょっと音程が狂うと気になって演奏できない。
 これなど良い方で、演奏しているときに他で音がすると、例えばグラスのぶつかる「カチャン」という音が聞こえるともう気持ち悪くて演奏できない。 実際にこういう人がいる。
 こうなると演奏などやっていられたものではない。
 しかし何故か不思議なのは自分が音程を外したときはとぼけているのか、吐き気をもよおすのは見たことがない。
 人のことだけが気になるのは「凡人」も「天才絶対音感」人も、同じ様である。

2005.10