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【たたき上げ】
近頃のミュージシャンは育ちも、環境も相当良くなっているので一般的な常識を持った(本当に昔のミュージシャンに一般常識はいらなかった)人が大多数で、ちゃんと学校も出、早くから音楽が好きだった人達は音楽学校をそれぞれ経由している。 昔の人達は(名誉のために全ての人ではないことを特記する)芸能界に憧れ、バンドマンに憧れ、とにかく派手な世界を夢見、異性にもてる、等という動機不純な輩が大半であった。 たまたま真に音楽が好きなものでも、学校を中途退学して先達に弟子入りし、音楽勉強だけをするわけだから一般常識など覚えている暇はない。
先生の楽器や、鞄を持ち、先生のテクニック、感性を学ぶ。
ここまでは真摯なミュージシャンの玉子であるが、先生のファンである女性と仲良くなったり、駆け出しの今でいうアイドル歌手を口説いたりしながらなので大した事はない。
しかし良い育ちの女性ミュージシャンや、兄貴肌のミュージシャンに巡り会うと、今も昔も結構親身になって、千尋の谷底へ落とされたり、旅をさせられたり窘めてくれるので早々に会えた人はラッキーである。 こういったような、何かの機会に恵まれた者は本気になって勉強し始め、やがて芽生えていく。
こうなると元々厭で入った世界ではないので、ぐんぐん育ち、やがて努力次第では自分独特の感性で、新たなスタイル、新たな奏法まで作り上げ、弟子入りを乞われるまでになる。 音楽学校出より、鞄持ちをしながら、時には殴られ、時には蹴飛ばされしながら勉強した者の方が、昔でいう、根性が付くというのか、大成する人がどちらかというと、多かったようである。
今は演奏家としての教育(昔は音楽が音学だったので演奏には少々むかなかったのか)も、しっかりしているので差がなくなってきたが、いわゆる「叩きあげ」昔の一流ミュージシャンには手のひらの後が必ず一つや二つ、頬にあったものである。
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