【ミュージシャンの必修科目 其の八】

10.【フリー】

グループに所属しなくても、個人的に仕事の依頼がくる実力が身につき一人で様々な音楽に接する機会をより多くもつため、或いは好きな音楽だけやりたい等の理由から独立をしたミュージシャン。
音楽で生計をたてあわよくば超一流の名をなすミュージシャンになって、将来テレビのトーク番組かなんかに呼ばれ、楽器の音ではなく声でおしゃべりをし、例え何分かでも主役で出演する。
そして、その瞬間テレビ局を出ても自分が違う人間になってしまい世間の人が100人が100人とも自分を見ているような気がして歩く格好も右足から出るか、左足から出るか、はたまた膝の高さは大丈夫か等々全てが気になってしまう、そんな文化人になった自分夢見、全てのミュージシャンが下心をもって純粋に音楽の道を志す訳である。

まずは何等かのグループに属し、先輩から怒られ、殴られ、蹴飛ばされ、宴会で芸をやらされ、今の世の「いじめ」をいじめというのなら、その「いじめ」に3を足して7を掛けた位の、地獄の苦しみを味わいながら、その他大勢の無難なパートをやらせてもらい、先輩たちが、博打をし、酒を呑み、諸遊びをしている間に、一応他人の10倍の努力をして多少抜きん出てきた頃、前記の欲望がムクムクと頭をもたげ「近道、近道」とばかりに独立宣言をする。
好きな音楽だけを演奏したいと思ってはちきれそうな希望、まるでお腹に爪楊枝を刺したらプルっと剥けてしまう「まりもようかん」の如く、体全体が「希望・希望・希望」と宙に浮きそうな若きミュージシャン。

2004.10